本年も残すところあと僅かになりました。ついこの前まで残暑が厳しいですねなどと言っていたような気がしますが、年齢を重ねたせいもあるのか時が過ぎるのを著しく早く感じます。
当院は令和5年5月に開院しました。開院した週から発熱された患者さんを積極的に診療しています。開院当初は発熱された患者さんのほとんどがCOVID-19陽性患者さんでした。現在は発熱患者さんのほとんどはインフルエンザA型ですが時折COVID-19の患者さんも見られます。7か月経過した12月現在、相当数のCOVID-19罹患患者さんを診療したことになります。COVID-19に罹患した患者さんは現在のオミクロン株(もしくはその亜型)であれば基礎疾患がなければ抗ウイルス剤なしでも通常予後であると考えられており、実際の診療でもそのように感じていますが、後遺症(疲れがとれない、咳が続く、味がしない、鼻水とまらない、ぼんやりして集中力が続かないなど)に困っている患者さんを一定数見かけます。いわゆるlongCOVIDという疾患概念です。しっかりとした治療法は確立しておらず少ない情報の中から漢方薬など試している状況です。longCOVIDに苦しんでいる患者さんはいつ直るのだろうかという大きな不安をかかえて過ごされていると考えますが、味覚障害、嗅覚障害にお悩みの患者さんにとって朗報となるかもしれない研究結果がJAMA Otolaryngology-Head Neck Surgery(November 9,2023)に掲載されました。COVID-19軽症(画像上肺炎なし SpO2 94%以上)患者さんを3年間追跡し味覚障害、嗅覚障害の有病率について調査されました。結果は1年後、2年後、3年後の有病率が40.9%、27.3%、13.6%と年ごとに減少しており3年後の時点でCOVID-19に感染していない対象群との有意差はないとの結果でした。分かりやすく言うとCOVID-19罹患後の味覚障害、嗅覚障害は年々改善していき、3年後には普通の人と同じくらいの割合になる(ほとんどの人は改善する)ということです。2020年1月に日本でCOVID-19感染患者が確認されてからもうすぐ4年になります。発生当初よりも重症リスクは低下していますが、発症予防のためのガードは降ろさない方が良さそうです。この論文が多くの人の希望となれば幸いです。 (院長 牧尾 善幸)