運動 週150分 毎日30分×5日間 そんな時間は確保できない!! という人のために  

 開業後3か月を経過しました。求める理想には程遠く、改善すべき点も多く皆様にご迷惑をおかけしている現状ではありますが、当クリニックが目指す「なんでも相談できるクリニック」実現のために、できることから少しずつ皆で日々努力していこうと考えています。

 今回のテーマは「健康維持のための運動は少しずつするのが良いのか、まとめてしても良いのかについて」です。

2023年7月18日のJournal of American Medical Association(JAMA)に

Accelerometer-Derived “Weekend Warrior” Physical Activity and Incident Cardiovascular Disease

のタイトルで記事が掲載されました。患者さんに対し高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病改善、または健康維持のために運動をしましょうとお話しすることがあります。頻度は週150分以上「毎日30分程度、週5回で150分になるので2日は休んでいいです」と説明することが多いのですが、日々忙しくいわゆるweekdayにはまとまった時間が取れない方もいらっしゃいます。週150分を確保するために 週末にまとめて運動する群と、 毎日少しずつ運動した群との間にリスク軽減の差はあるのかを比較した試験です。主要アウトカムを心房細動、心筋梗塞、心不全、脳梗塞と設定し運動パターン別の心血管リスクの発症について調査されました。運動パターンとして週150分以上の中強度以上の運動(Moderate-intensity to vigorous-intensity physical activity  やや早めの歩行、階段の上り下りなど)を1,まとめて運動した群(Weekly Warrior) 2,少しずつ運動した群(active regular group)、3,運動できなかった群(inactive group)に分けられました。結果はすべての主要アウトカムにおいて運動できなかった群に比べて運動を行った両群(Weekly Warrior、active regular group)ともにハザード比の低下がみられ運動の有益性が示されました。Weekly Warriorとactive regular groupの間では両群にハザード比の有意差はありませんでした。結論として筆者はガイドラインが推奨する中強度の運動について毎日少しずつ行っても、週末にまとめて行っても心血管リスクは同等に低下すると結論づけています。いろいろとlimitationも多くさらなる考察は必要かと思いますが、忙しい人にも運動を勧めやすくなり、多くの人にメリットとなると考えます。

当院には膝や腰を痛めている人も多く、そもそも運動などできないと言われることも多くあります。しかしながら従来禁忌とされていた心不全や腎不全の患者さんでさえ最近のガイドラインでは運動療法の重要性が支持されており、患者さんの個別の状況に応じて安全に遂行できるであろう至適運動量を一緒に考えることが重要だと考えています。         (院長 牧尾 善幸)

2023年08月14日