短かった夏休みも終わり、新しい目標に向けてそれぞれが日々これまでにない程の努力をしています。私たち2人が直接的に手伝えることはあまりありませんが、いい環境づくりは必要かと思っています。
患者さんからよく尋ねられる質問の1つに「先生 やせ薬はないでしょうか?」というものがあります。患者さんにとってなかなか切実な問題のようで、どこの病院で勤務していた時も必ず尋ねられた質問の1つです。生活習慣病の患者さんにおいても、また膝痛、腰痛の患者さんにおいても体重管理は重要であることは言うまでもありません。生活習慣病のみの患者さんには食事管理、運動の励行などで対応していただきますが、当院に多い膝痛、腰痛の患者さんには運動のお願いはできないことも多く、患者さんと一緒にできる運動を探している状況です。
2023年6月25日のLancetオンライン版に
Oral semaglutide 50 mg taken once per day in adults with overweight or obesity (OASIS 1): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial
のタイトルで論文が掲載されました。OASIS 1試験という日本を含む9か国50施設以上で実施された二重盲検比較試験です。対象はBMI30以上、またはBMI27.5以上で体重関連の合併症(高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群等)を有する2型糖尿病のない患者さんです。667人を無作為に2つのグループに分けて生活習慣の改善を行いつつ1,経口セマグルチド50mg(糖尿病で使う薬です)投与群と2,プラセボ(見た目、味は同じで薬効成分がない)群に分られ、主要エンドポイントは68週後の体重の変化率と5%の体重減少達成率に設定されました。結果は68週までの体重変化率としてセマグルチド群で-15.1%、プラセボ群で-2.4%とセマグルチドの明らかな減量効果の有意差が示されました。同じく68週後の5%の体重減少達成率においてもセマグルチド群で85%、プラセボ群で26%でありこちらも明らかな有意差ありの結果です。この試験のポイントは1,非糖尿病患者 2,経口で治療可能 という点です。現在日本では肥満治療薬としてマジンドール(サノレックス)、防風通聖散が使用可能です。(GLP-1受容体作動薬の注射は現時点ではありませんが、ウゴービ皮下注(GLP-1受容体作動薬)が近日販売予定となっているようです)ここに経口セマグルチドが追加となると、注射の煩雑さから解放される点や入手のしやすさなどから今後多くの患者さんに有用ではないかと考えます。しかしながらいくつか注意点があり1,そもそも肥満症の定義が日本と外国で違う 2,日本での経口セマグルチドの最大量は14mgである 3、内服による副作用 といった問題点があるので当面は患者さん自身による単独使用は不可と思われます。医師の監修のもと使用していくほうが良さそうです。
初めの「先生 やせ薬はないでしょうか?」の質問に対する答えは「現時点で日本においては食事療法、運動療法、もしくは減量手術しかありません」となります。(院長 牧尾 善幸)